「でも! ああでもしないと婚約破棄できなかったはずです!」
エリカが口を挟むと、シオン様が困ったようにローレンス殿下を見る。
シオン様はローレンス殿下の影の側近だ。私が何度もローレンス殿下に婚約破棄を持ちかけていたことを知っているのだ。
ローレンス殿下は気まずそうに、咳払いをした。
どうやら自分からは真実を話す気はないらしい。
「違いますよ。王家の都合でなされた婚約です。私は子供のころから何度も、何度も、なーんども!! 婚約破棄の申し入れをしています。そのたびに、縋るような手紙を送ってきたのは殿下のほうですわ。証拠がほしければお見せしますけど」
私の言葉に、ローレンスは顔を赤くして慌てる。
「! あんなものを取っておいたのか!!」
「当たり前です。代筆しているのはシオン様でしょう? シオン様の文字で書かれたものですもの。大切な宝物ですわ」
フンスと力説すると、シオン様が小さく噴き出した。
(推しが噴いた! 私の推しが噴いた!)
感動に浸っていると、ローレンス殿下が茫然とする。



