「……しかもそんな格好で、俺に恥をかかせるつもりか?」
「不満があるなら婚約者様がお気に召したものを贈ってくればよかったのでは?」
(まぁ、今から婚約破棄するつもりの相手にドレスなんて贈れないでしょうけれど。贈られたところで受け取るつもりもないけれど)
サラリと答えると、ローレンス殿下はムッとする。
「ドレスを用意しなかった俺への当てつけか。金持ちのくせに意地汚いな」
「いいえ? わけあってこの服装ですのよ」
私は艶やかに微笑み、入り口を見つめた。
今から、本日の主賓、新大聖女が入場するのだ。そう、この物語の主人公エリカである。
(そして、私の推し、宮廷魔導師シオン・モーリオン様もご登場よ!! きゃー!!)
猛る心を抑えつけ、今か今かとドアが開かれるのを待つ。
ファンファーレが鳴り響き、ドアが開かれた。



