「一応オーナーの名は秘密ですの。それに、王宮で働くなんてまっぴらごめんですわ。家には愛しのシオン様がいるというのに」
私が答えると、お兄様は肩をすくめた。
「だいぶご執心だな。小さなころは姿を見かけるだけで失神していたくせに」
「あれは感激の失神でしたのよ! それをお父様もお兄様も誤解して、私とシオン様を遠ざけようとなさるんですもの!」
ふくれっ面を見せると、お兄様はニコニコと笑う。全然反省などしていないのだ。
「悪かったよ。だから今は協力しているじゃないか。許してくれよ」
「冗談ですわ」
私は笑う。
「では、責任者を一度こちらに寄越してくれ」
「承知いたしました」
商談成立である。
私は人事部門のドアを閉めた。
「この部屋で見るルピナ嬢はかわいいですね」
ドア越しに声が漏れてきて、私はビックリした。
「勝手に見るな」
お兄様がすぐさま一喝し、同時に窓際のカラスが飛び立つ。
盗み聞きしていた私は、おかしくて笑った。



