ローレンス殿下は私を見て、忌ま忌ましそうに吐き捨てた。
「なぜ遅れた。王族より遅れるとは不敬だぞ」
「本日エスコートされる方が、連絡もなく迎えに来なかったもので。待っていたら遅れましたの」
私の返事に、周囲の王族たちは何事かとローレンス殿下を見た。マナー違反はどう考えても彼だからだ。
(普通なら、ドタキャンされた時点で空気を読んでこの場に来ないと思ったのでしょうけれどね。甘いのよ。私は悪女ルピナよ? 売られた喧嘩は買うわ!)
事実、漫画上のルピナも同じように考えたのだろう。遅刻してこの場に登場し、無様に公衆の面前で婚約破棄されている。
(私は、漫画と同じ轍を踏むつもりはないけれど、あえて同じ行動を取らせてもらうわ)
私は嫋やかに微笑み返した。
ローレンス殿下は怯む。



