天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


 エリカはピンク色の瞳を潤ませて、縋るようにローレンス殿下を見上げた。

「……ロー……、もちろん、信じてくださいますよね?」

 そう言いながら、キュッとローレンス殿下のジャケットの裾を掴んだ。

 いたいけな幼子のような雰囲気で、哀れみを誘う。

「っ! あ、ああ……」

「まさか、信じて……くださらない?」

 なんだか微妙な空気になったふたりを見て、私はニンマリとほくそ笑んだ。

(どうやら論点を上手くずらせたわね)

 私は手を振り、その場を去る。

「それでは失礼いたしますわ」

「っ、待て! ルピナ!」

 ローレンス殿下が呼び止めるが、エリカが縋るような目で彼を見上げていた。痴話げんかになるかならないかのところだ。

「殿下は私なんかを気にせずに、大聖女様のお話をゆっくり伺ったほうがいいですわよ」

 私はそう答えると、人事部門へと向かった。