私は白いショートボブの髪を掻き上げ、老害たちを鼻で笑った。

「もちろん、お父様にも伝わっておりますよ。年老いた噂ガラスは、加齢で耳が悪いらしく、お声が大きなものですから」

 私が言うと、老害のひとりがギンと目を剥く。

「そんな振る舞いをしているから、今夜もエスコートがないのですよ。ひとりで夜会に来るなんて、どんな常識知らずなのかしら!」

 私はニッコリと笑う。

「まぁ、不敬。私の婚約者は王子殿下ですのよ? 婚約者もエスコートできない彼は非常識じゃないのかしら?」

 にこやかに答えると、老婦人は歯ぎしりをする。

 私は軽やかに歩みを進める。目指すは、婚約者である第四王子ローレンス・ヘリオドール殿下である。

 国王夫妻が座する玉座より下方に、ほかの王族たちが立ち並んでいるのだ。私も王子の婚約者として、一緒に並ぶことになっていた。

 漫画のヒーローだけあって、見た目はいい男だった。

 ローレンス殿下は、黄金の髪・黄金の瞳、溌剌とした威風堂々たる姿をしている。軍服姿で胸を張り立つ姿は、王者の貫禄である。

(でも、私の推しのほうがかっこいいのよ)