長官は退職届を自分の額から剥ぎとると、眉間に皺を寄せ、退職届に顔を近づけたり離したりしながらマジマジと見る。老眼なのだ。
「……たしかにシオンのサインだ。どうせ、むりやり書かせたのだろう? 結婚だってそうだ!」
「だとしたら、なにか?」
「横暴だ!」
「私が横暴だなんて、周知の事実でしょう?」
私は驚いて瞬きする。なにをいまさら、である。
長官は顔を真っ赤にした。傷つけるための暴言がなんの効力も発揮しなかったからだ。
憤りながら暴言をひねり出す。
「……!! この……この! ……悪妻め!!」
しかし、その言葉は私にとっては褒め言葉だ。
「あら、やだ、シオン様の妻とお認めになってくださるの。嬉しいわぁ!」
私は両手をパンと打ち鳴らした。



