「まぁ、あの格好をごらんなさい。ルピナ嬢はいい年をして髪も伸ばさず……。せっかくの聖なる白髪も台無しね」
「今夜も場をわきまえない格好だわね」
「王宮の舞踏会で乗馬服とは……許されるのでしょうか」
「それどころか、動物や孤児を攫い、変な塔で飼っているそうよ」
「まぁ、恐ろしいこと……」
「セレスタイト公爵も、娘のことになると親馬鹿となってしまうとは。呆れたものね」
「自分の娘が希代の悪女といわれているのはごぞんじないのかしら?」
老婦人たちがコソコソと、しかし周囲に聞こえる程度の声の大きさで、噂話に花を咲かせている。
乗馬服を着てきたのはちゃんと理由があるし、塔で飼っているものにも意味がある。しかし、それを説明してやる義理はない。



