私の推しは、主人公に振られる当て馬宮廷魔導師シオン様だ。最終的には、恋に破れ職を奪われた彼は、傷心の末失踪し物語から姿を消す運命なのだが。

(私の目が黒いうちは、そうはさせないわ!)

 青い目でありながらもそう思い、私は悪女の力を利用して、なんとか推しを幸せにしようと奮闘してきた。

 今夜はその総仕上げである。

(さぁ! 私を婚約破棄する王子殿下、待っていてね!)

 バーンと勢いよく、会場のドアを開ける。

 人々が振り返った。

 ざわめく会場。

 常識を重んじる人々が眉を顰める。