天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


(国王陛下は今でもルピナ様のほうが王子妃に相応しいとお考えなのかもしれないわ……)

 そして、思い至る。

(だから、ローは顔を見せないのかも……。私、捨てられてしまうの?)

 お腹の底がギュッといたくなる。

 両親が疫病で亡くなり、ひとりぼっちになった十二歳。お金が尽き食べるものがなくなったころ、親切だった隣のおじさんが食事を分け与えてくれるようになった。

(優しいと感謝してたのに突然襲いかかってきた……)

 自分の置かれる環境が変わると、周囲が豹変することを知っている。

(あのとき、シオン先生が助けてくれなかったら私――)

 シオン先生と出会い、私の人生は好転した。そして、シオン様がルピナ様のもとに行ってから、私は暗転しはじめてきている。

(シオン先生がこのままいなくなってしまったら――)

 ゾッとして自分自身を抱きしめた。ジョウロから水が零れる。水がかかった聖花は、黒くくすんだ。

(ああ、こんな不吉な色……誰にも見せられない)

 私は花の前に跪き、黒くくすんだ花弁を摘み取る。