天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


「嘘をつかないでください。ローレンス殿下と会っていることは噂になっているんですよ。大聖女様が遅れると私の次の勤めが遅れ、みんなに迷惑がかかるんです! 雨の中、待たされる身にもなってください!」

「本当にごめんなさい」

「鍵は自分で返しに行ってくださいね!」

 彼女はそう言って鍵を押しつけ、神殿へと向かっていった。

「いつにお迎えに上がれば良いですか」

 怒鳴られ落ち込む私に、侍女は機械的に聞いてくる。

「あ、今日は遅れた分を残って作業しますので、迎えに来なくて大丈夫です」

「そうですか」

 侍女はそう答えると、傘をさし振り向きもせず帰っていった。