天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


(ダメダメ! 弱気になっちゃダメ! 一生懸命頑張ればきっとわかってくれるはず! 負けるわけにはいかないわ!)

 私はそう思い直し、ブンブンと頭を振って顔を上げた。

 そして、侍女のさす傘に入り王宮内の神殿にある『聖なる花園』へと向かう。

 今日の大聖女の勤めは『聖なる花園』の手入れなのだ。

 霧雨の降る花園の入り口に到着すると、見慣れた聖女見習いが傘を差し立っていた。今日の鍵当番なのだろう。彼女は十四歳からこの王宮神殿で共に過ごしてきた私の同期だ。

 私はシオン先生からローレンス殿下に紹介され、ローレンス殿下の推薦により王宮神殿の聖女見習いになった。

 聖女見習いとして過ごしていた私は、花占いの実力を見込まれて、十七歳で大聖女になった。聖女や聖女見習いになるのは貴族の令嬢が多く、平民から大聖女になるのは大抜擢だ。

「《《大聖女》》エリカ《《様》》。今日も遅刻です」

 同期の聖女見習いはトゲのある言い方をして、私に鍵を突き出した。

「あ……。ごめんなさい。王子妃教育が長引いて――」

 理由を説明しようとすると、彼女は被せるようになじってくる。