天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


(私、またなにか間違ってしまったの?)

 不安でローレンス殿下を探そうとキョロキョロする。しかし、彼の姿はどこにも見当たらない。

 婚約式が終わってから、ローレンス殿下はこの場に現れなくなってしまったのだ。約束していたわけではないからしかたがない。

(忙しいのは知っているから、我が儘は言えないけれど……)

 私は心細い気持ちで立ち尽くしていると、貴婦人たちはクスクスと笑った。

「まぁまぁ、捨てられた猫のようね」

 その言葉にギクリと震える。

(捨てられた……。私、捨てられてしまうのかしら?)

 押し寄せてくる疑惑を打ち払うよう、私は再度周囲を見回した。

(遅れているだけよね? ロー)

 そんな私を侍女は冷たい目で見くだす。