天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


「それは、私のせいか? 私の髪が黒いから――」

「! ちがう!! 違います!! そうじゃなくて!!」

 シオン様は顔を上げ、疑い深げに私を見た。

「シオン様の花婿姿を見たいに決まってるじゃないですかー!!」

 私は絶叫した。

「結婚式でなければ着られない純白の礼服に美しい黒髪が流れ落ちる姿……! 想像するだけで悶絶ものです。地上に舞い降りた天使にちがいない。ああ、絶対みたい! 絶対見たい――」

「お、落ちつけ?」

 シオン様が怯えた目で私を宥める。

 私はゼイハアと荒ぶる息を落ち着かせてから、シオン様を見た。

「そもそも、私たちは契約結婚です。あまり大々的にしたらボロがでるでしょう? それに、結婚式などしたら、誓いのキスとか――」

 一瞬、自分とシオン様のキスシーンを想像し、私は頭をブンブン振って妄想を吹き飛ばす。

 シオン様はギョッと驚く。