天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


「ああ、なんて嘆かわしい! 黒など不吉な色なのに!」

 吐き捨てるような声が聞こえて、私は鼻で笑い飛ばす。

「あら、いやだ。黒が不吉だなんて、まだおっしゃる方がいるのね? 最近話題の特別寝台列車アスターも黒、時代の流行色は黒ですのに。古いわ」

 私の声に、老婦人は怯み、令嬢たちは盛り上がる。

「たしかに、最近は黒が注目されていますものね!」

「アスターに乗られたのだとか、お話を伺っても?」

 ランランと目を輝かせる令嬢たちに私は軽く頭を下げた。

「まずは、ローレンス殿下にご挨拶差し上げなければならないの。ごめんあそばせ?」

 そう言ってホールの奥で待ち構えるローレンス殿下とエリカを見た。

 ローレンス殿下はなにが気に入らないのか苦虫をかみつぶしたような顔をしている。