私は、国王陛下の紋章の入った手紙を持ち魔塔へと向かっていた。

 先程ローレンス殿下の側近がシオン様宛として届けてきたのだ。ローレンス殿下とエリカの婚約披露パーティーの招待状である。

(本当に無神経にも程がある!! シオン様がエリカに向ける好意に気が付いてなかったとしても、私はローレンス殿下に婚約破棄されているのよ? 普通の神経なら招待しないわよ!)

 私は怒りと同時に悲しみも感じていた。

(別に私は気にするタイプじゃないけれど、シオン様は婚約披露パーティーのエリカを見たら傷つくに決まってるのに……)

 原作で苦しむ姿を見ていただけに胸が痛む。

(でも、さすがに国王陛下の紋章が入った手紙を無碍にすることはできないわ)

 私はズーンと落ち込んだ気分で魔塔の庭の前に来ていた。

 陰鬱な気持ちで、ソーッと庭の様子を窺ってみる。カラスがひと鳴きして空へと羽ばたいていった。

 庭ではシオン様の指導のもと、魔獣たちがリハビリをしている。

 飛べなかったグリフォンは飛べるようになり、ところどころハゲていたケセランパサランも機嫌良くコロコロと転がっていた。

 庭に座り寝ているユニコーンの腹に、シオン様は寄りかかっていた。リハビリをする魔獣たちを眺めながら、なにやらメモを取っている。きっとカルテを書いているのだろう。

 そんなシオン様を挟むように寄り添い眠るのはフェンリルとケット・シーだ。しかも、フェンリルのお腹には孤児の子供たちが包み込まれている。