天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


(シオンはオレにとっても必要だが、エリカがシオンに頼るのも気に障る。エリカには俺だけを見てほしいのに)

 複雑な思いが心の中に渦巻く。シオンの力はオレに必要だ。しかし、エリカに関わるシオンは邪魔だ。相反する思いが判断を鈍らせる。

 そんなオレにエリカは怪訝そうな顔を向けた。

「ロー? どうしたの? まさか、シオン先生を見捨てるの?」

「……そんなわけないじゃないか……」

 曖昧に返事をすると、エリカは不安気にオレを見た。その表情をシオンがさせたかと思うと心が乱れる。

(ルピナがシオンにしたように、エリカを攫って閉じ込めれば良かった。そうすればこんな思いなど抱かずにすんだのに)

 薄暗い思いがよぎる。

(今からでも……)

 そう思いかけたとき、国王陛下の使いが現れた。

 オレの侍従に耳打ちをする。

 すると侍従がオレのそばまでやってきた。

「国王陛下がお呼びです」

 侍従の言葉にオレはドキリとした。

「国王陛下がお呼びだそうだ。今日はこれで失礼する」

 オレはそう言ってその場をあとにした。エリカの名残惜しそうな視線を背に感じながら。