平民出身の彼女は、淑女としての基礎的なマナーがわかっていない。そのうえ、貴族令嬢のあいだに流れている空気感が読めないのだ。王子妃となるには、学ぶべきことが多すぎるようだ。
「最近忙しいと聞いている。休みをとるようオレから言っておこう」
「やめて! ロー! 私、頑張って勉強しているの。はやく、ローに相応しい人間になりたいから!」
エリカが必死にそう訴え、オレはいじらしいと思う。
「そうか、エリカがそう言うなら、オレは口を挟まない」
エリカはその言葉を聞き、安心したように頷いた。
「……ところで、ロー……。シオン先生を助けなくていいの?」
エリカに尋ねられ、オレの心に影がよぎる。
(シオン……か……。シオンは自らルピナのもとにいると言っていた。それに、ルピナのもとへ行ってからシオンの評価はうなぎ登りだ。戻ってきたいと思うだろうか)
オレはため息をかみ殺し、エリカを見る。



