悪女として転生していたことに気がついたとき、私は狂喜乱舞した。

 なんせ、悪女ルピナ・セレスタイトは絶世の美女だ。この国では特別な魔力があるという月白色の髪をもち、誰をも魅了する瞳は青空を閉じ込めたようだと描写されていた。

 しかも、セレスタイト家は、このヘリオドール王国で序列第一位、一番の大金持ち公爵家なのである。父は国璽尚書(こくじしょうしょ)を務め、兄たちも宮廷の要職に就いている。ルピナはそんなセレスタイト公爵の末娘で、家族から溺愛されているのだ。

(どう考えても、どう考えても前世よりいい生活なのよね。悪女だとしても幸せ過ぎるわ)

 前世、貧乏で社畜をしながら奨学金を返していた私にとって、今の生活は最高だ。しかも悪女設定なので、わがまま放題し放題だ。どうせ、なにをしても評価など上がらないのだから、人の顔色を窺う必要がない。

(そ・れ・に! この世界には私の推しがいる!!)

 この一点において、私は神に心底感謝した。推しと同じ空気を吸えるのなら、『悪女上等!!』なのである