天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


 シオン様は魔塔に来てから、意欲的に論文を発表しているのだ。今までローレンス殿下とエリカのために使っていた時間が空いたうえ、魔塔には資料も研究設備も整っている。

今まで使えなかったシオン様の本領を発揮してもらっただけで、あっさりと成果が現れた。

(というか、今までは自分の研究成果をローレンス殿下に渡してしまっていたから、シオン様は正当な評価が受けられなかったのよ)
 ローレンス殿下は、「黒髪の下級魔導師の書いた論文では正当な評価は受けられない。研究を正当に評価させるために自分が代わりに発表してやる」とシオン様を丸め込んでいたのだ。

悲しいことに、この世界においてローレンス殿下の言い分は間違っていない。評判の悪いシオン様名義で論文を発表したとて、査読の段階でなかったことにされてしまう。

シオン様もそれをわかっていたからこそ、自分の名誉より社会貢献を選び、ローレンス殿下の意見に従っていた。

しかも、原作では、シオン様はローレンス殿下のことを、発表する機会がない自分の論文を、代わって発表してくれた恩人だと感謝すらしていたのだ。

(でも! 本当にシオン様のことを考えるなら、王子であるローレンス殿下が意識改革をおこないなさいよ!! 筆頭著者にシオン様の名前を連名で入れればいいだけだったじゃない!! そうしなかったのは横取りする気満々に思えるわ!)

 私はシオン様の不当な評価を覆すべく、論文の筆頭著者にシオン様の名前を堂々と書き記し、アカデミーの名誉教授に責任著者となってもらった。

 シオン様は私の婿となり、セレスタイト公爵の名字となったことで無下には扱えなくなり、名誉教授が責任著者としてあいだを取り持つことで、もみ消しを事前に防いだのだ。

 もみ消しさえなければ、シオン様の論文が評価を受けることはわかりきっていた。ローレンス殿下に奪われた論文の数々は、さまざまな賞を受けていたからだ。