天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


「ほら、ここから始めてごらん? ノコギリは板から離しちゃダメだよ。あと、全部引き切ってもダメ」

「こう? そう、そう」

 ノコギリを扱う子供の顔がみるみる明るくなっていく。

 ギコギコと軽快な音に交じり、木屑がサラサラと落ちてゆく。

 ゴトリと音を立て、切れた木材が土に落ちた。

「やったー!! オレも切れた!!」

 ワッと歓声があがる。

「すごーい! すごーい!」

「はじめてなのに上手だね!」

 皆に褒められ、子供は得意げな顔で鼻をこすった。

「へへへ! ノコギリはオレに任せろ! みんな切ってやるぜ!!」

 そう言って、その子はノコギリを振り上げ肩を叩く。

 私は恐怖のあまりヒュッと息を呑んだ。

「っ! いた!!」

 子供は驚き、不思議そうな顔をしてノコギリを見る。

 ノコギリの歯にはその子の血がついていた。

「……え?」

 ノコギリの歯が耳に当たり、切れたのだ。自覚がないのか呆然としている。

 私はとっさに子供の手からノコギリを取り上げた。