*****
シオン様の部屋のドアを叩くと、彼は快く迎え入れてくれた。
窓の外にいたカラスが私に驚き飛び立っていく。
机の上には先日の旅行で集めた銀竜草が置かれていた。薬草や魔術に関する本が広げられ、ドラゴンの治療について研究をしているらしい。
私はそれを見て閃いた。
(そうよ! ドラゴンの治療だけでなく、魔塔での研究に没頭してもらえれば、宮廷に戻ろうとは思わないんじゃない?)
脅迫するよりもよい案である。
「今日はシオン様にお願いがあってまいりましたの」
「まずは、そこへ座るといい」
シオン様は私にソファーを勧め、紅茶を淹れてくれる。
(推しのお茶、再び! 今度こそ、保存……なんて無理よね)
私は惜しいと思いつつ、紅茶を口に運んだ。



