「迷惑ではないから気にするな。プロモーションならば、それらしく振る舞ったほうが良いのだろうか? 君が嫌ではなければ――」

 シオン様はそう言うと、私をエスコートするかのようにとさりげなく腕を出した。

「!! い! いいんですか!?」

「ああ、夫婦なら当たり前だろう」

 シオン様は無表情でそう答える。

「! ありがとうございます!!」

 私はギュッとシオン様の腕にしがみついた。

(推しから許可が得られたんだもの! このチャンスを逃しはしないわ!)

 思わず鼻から「ムフン」と息が漏れ、ドヤ顔になってしまう。そして、自慢するかのようにプラットホームを見回す。

 歓声がさらに大きくなる。

「おめでとうございます!」

「お幸せに!」

「絶対に私たちも新婚旅行に行きまーす!」

 みんなパンフレットを振りながら口々に叫ぶ。

(すごいわ。良いキャンペーンになっている。さすがループス商会ね)

 私はそう思いつつ出迎えの人々に軽く手を振ってみる。

 すると、いっそう大きな歓声が沸き起こった。