天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


「いいや?」

 シオン様の答えに私は脱力した。

「よ……よかったー……」

「なにをそんなに気にしていたのだ」

「……だって、『夫婦なら当たり前のことはした』とおっしゃったから……」

「ああ、一緒に寝るのは夫婦なら当然だろう。それ以外になにがあるんだ?」

 無邪気に問われ、心が汚い私は気まずい思いだ。

「ぅ、その、あの……私、……シオン様のことを襲ってしまったのかと」

 噴き出しつつシオン様が問う。

「私が無策で襲われると思うのか?」

 その言葉に私はホッとした。

(良かったー! 私、シオン様を汚してしていなかったんだわ!)

 無意識でありながら、ファンとして最低限の礼節を守っていた自分を褒めたい。