天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

「さ、シオン様、中へ入りましょう。あのような者に、あなたの魔力を使うのは惜しいですわ」

 私は杖を持つシオン様の手を両手で包み込んだ。

 冷たく乾いた手が、ガチガチに杖を握り込んでいる。

「しかし、あなたを侮辱した……」

「いいのよ。どうせ、帰り道は苦労するんですから、シオン様が手を下すまでもありませんわ」

 シオン様はしぶしぶ頷くと、のろのろと杖を懐にしまった。

 私はオリバーを一瞥し、ニッコリと微笑んだ。

「迷わず気をつけてお帰りくださいね? 夜になるとクマもモンスターも出るそうですわよ」

 私の言葉に従者はガタガタと震えた。

「は、はやく、山を下りた方がよろしいのでは?」

 従者の言葉に、オリバーは私を見た。