(……すべてが無駄になった……)
私は脱力して、シオン様の耳から手を放した。
(きっと、シオン様のことだもの。エリカとローレンス殿下の願いなら聞き入れてあげるでしょうね。自分がどんなに傷ついても……)
きっと見物客はシオン様をあざ笑うだろう。
エリカを取られた男として。
シオン様は新聞を畳むと、オリバーに返そうとした。しかし、オリバーは受け取らず、従者に受け取らせる。
「そうだ、シオン。その悪妻に思い通りにならないところを見せつけろ! 王都に戻るんだ!」
オリバーは勝ち誇ったように私を見た。
シオン様は私を見る。
(行かないでと言ってもいいの? でも、私が呼び止めても無理よ)
私は唇を噛んで俯いた。



