私はその先を見る。
そこには野生のエリカが生い茂っていた。花はもうない。
花がなくてもシオン様には見分けがつくほど、特別なのだ。
(ああ、こうやって一生彼女を思い出すのね)
私はやりきれない気持ちになった。花が咲くたび、花が散るたび、同じ名を持つ彼女を思い出す。季節が巡るたびによみがえる思い出は、まるで呪いだ。
(だからきっと……原作のシオン様は耐えられなかった……)
せめて私が同じ名前なら、その美しすぎる記憶を塗り替えることもできただろう。思い出す者がふたりなら、痛みは半分になったはずだ。
(でも、私はルピナ)
私はただその背を見守るしかできない。
「……ルピナス……」
シオン様が呟いて、私はハッと息を呑んだ。
シオン様が振り返る。逆光で表情は見えない。
「ルピナスが咲いている。ルピナの名はあの花から取ったのか?」
尋ねられ、私は無言で頷いた。



