シオン様は振り向かない。
(そもそも私の想いは恋じゃないもの。振り向いてほしいわけじゃないわ)
シオン様は悪女と呼ばれるルピナにも優しい。
愛する女性から引き離そうとする私のことを恨んでもおかしくないのに、なぜか私の我が儘に付き合ってくれている。
(でもそろそろ疲れてしまったかもしれないわね)
シオン様の意見も聞かず、行き先を勝手に決めてしまった長い旅行。原作の情報では、人混みが嫌いだったシオン様のために人気のない山脈を選んだが、もしかしたらもっと違うところが良かったのかもしれない。
(立ち寄った町では楽しそうだったもの……)
思い込みと決めつけでシオン様を振り回し、愛想をつかれてもおかしくはなかった。
(だとしても、パレードが終わるまではここにいてもらうのだけれど)
嫌われても恨まれてもかまわない。
シオン様に傷ついてほしくない。
紫がかった景色の中で、シオン様の髪が乱れている。風が強い。
ふとシオン様が足を止めた。



