天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


「荷物を運んでちょうだい」

 使用人たちがログハウス内を整えているあいだ、私たちは周辺を散策することにした。

 心地よい風が吹いてくる。王都よりも十度ほど気温が低い。

 王都では見かけない素朴で可憐な高山植物が、慎ましく咲いている。

 あれからシオン様はなにも話さない。黙って小道を歩いている。

 無表情な顔つきからはなにを考えているのか、私には想像もつかない。

(ミステリアスなシオン様も素敵……だけど、なぜかしら、少し淋しげに見えるわ)

 やはり王都から遠く離れすぎてしまったかのだろうか。

(それともエリカが恋しくなってしまったのかしら。物理的に距離を取るのが一番だと思ったけれど、会えないと思うと思いが募るのかも知れないわね)

 私は少し切なくなる。