天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

 再び、フラッシュの嵐だ。

 エリカが大聖女だからなのか、王族を公式の場において愛称で呼ぶことを誰も指摘しない。

 ふたりは見せつけるように私に微笑んでから、フロアの中央へ進んでいった。

「まぁ、お似合いのふたり」

「エリカ嬢はシオン様と踊るべきでは?」

「でも、こちらのほうが華やかだわ」

 明らかなマナー違反を肯定し、貴族たちは私を見てあざ笑う。

「ルピナ嬢は気の毒ね。婚約者なのに無視されて」

 私はそれよりもシオン様が気になった。

 シオン様は無表情で幸せそうに踊るふたりを見つめている。

(ああ、シオン様。切ない横顔も美しいけれど……でも、こんなの苦しすぎる……。早くシオン様を救ってあげたい)

 私は自分の胸元をギュッと握りこんだ。