天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


「私は先に準備をする」

 そう言って背を向ける首筋は赤い。

(まさか、照れている?)

 私はシオン様が見えなくなってハタと我に返る。

(で、結局、私は昨夜なにをしたの!? 全然思い出せないんだけど!!)

 身もだえウンウン思い出そうとして、やはり欠片ほども思い出せず、私はグッタリとする。

(はぁぁぁ……。無理、思い出せない……)

 あまりの混乱に喉が渇き、シオン様の淹れてくれたアーリーモーニングティーを飲む。
 濃いめのオレンジペコーが眠気を覚まし、甘く柔らかなミルクが優しく私を落ち着かせる。とても美味しい。

(シオン様が淹れてくれた紅茶。あの人と同じ、強さと優しさを感じる――)

 朝の日差しをあびて、微笑むシオン様を思い出す。

(まぁ、いいか。シオン様が幸せそうなら、もうなんでもいいわ)

 私は考えることを放棄して、紅茶をしみじみと味わった。推しの淹れる紅茶を飲むという僥倖(ぎょうこう)など二度とないかも知れないのだ。

 あとで破廉恥犯として罰せられるにしても、今だけは酔いしれたい。

(神様、ありがとうございます!)

 私は心の中で感謝した。