天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


 室内楽団が音楽を奏でだす。ダンスの時間になったのだ。舞踏会の初めのダンスは入場時のパートナー同士で踊るのがこの国でのマナーだ。そのため、婚約者や恋人、夫婦や家族であることが多い。

 シオン様はエリカと踊るべく、目配せをした。

 しかし、エリカはまったく別の方向を見ていた。視線の先には、ローレンス殿下がいる。

 ローレンス殿下はエリカの前にやってきて、優雅にダンスを申し込む。

「新大聖女様、俺と踊ってくれないか」

「ロー♡」

 エリカはマナーも気にせずにローレンス殿下の手を取った。