(父からは『お前が生まれなければ』と言われ、兄弟からは『死ね』と言われ続けてきた)
ただ幸運にも、私には大きな魔力があった。
私を殺せないと悟ったモーリオン男爵は、せめてその魔力を利用しようと、私を王都の魔術寄宿学校へ入れ、屋敷からていよく追い出したのだ。私の魔力に生物学的父の影を見て恐れたのかもしれない。私は十三歳で、家から出られることに安堵した。もう、殺される心配はないと思ったのだ。
私はそこでも異物だった。どこへ行っても黒髪には居場所がない。多くのイジメや嫌がらせも受けたが、それでもモーリオン男爵家にいるころよりもマシだったのが救いだ。
そして、そこでローレンス殿下に出会ったのである。
私とは正反対の輝かしい髪を持つ、生まれながらに祝福された人。しかし、彼は私をそしらなかった。魔術の実力を認め、友と呼んでくれたのだ。身分の低い側室の子として生まれたローレンス殿下は王宮内に居場所がなく、私に共感をしてくれたのだ。
家族も友もいなかった私にとって、ローレンスはまさに光だった。彼と一緒であれば、なにがあっても大丈夫だと、彼のためならなんでもできると思っていた。



