「っあ、ああ……。そうだ。シオンがエリカを育てた」
ローレンス殿下の言葉に、周囲は一瞬口を閉じ、しかしすぐに話しだす。
「ああ、自分が育てたと自慢したいのか」
「師なら弟子の晴れ舞台を汚すようなことすべきではないことがわからないのだな」
どうしてもシオン様を侮辱したい人々に、私は反吐が出そうだ。
シオン様は緊張するエリカに優しげな言葉をかけつつ、国王夫妻の前に進み出た。
跪くふたりに、国王陛下が声をかける。
「新大聖女エリカ、またその師であるシオン・モーリオン、ふたりにその証しを授ける」
エリカは、国王陛下直々に大聖女の証しであるペンダントを首にかけてもらう。教会のシンボル白百合を模したものだ。
シオン様には大聖女を育てた師として、勲章が渡された。箱に入れられた勲章を従者がシオン様に手渡す。侍従は、あえてなのか嫌悪感をあからさまにしている。
シオン様は無表情でそれを受け取った。
(シオン様が大人だから怒らないけれど、侍従の分際で失礼にも程があるわ!)
私は内心怒りながらも、堪える。なにしろ、山場はここではないのだ。今から始まる茶番をいかにして、シオン様に有利な展開に進めるか、そちらのほうが重要である。



