私ときみのひみつ

授業が始まる。

でも、大半の女の子は黒板なんか見ていない。国語の先生は結構優しくて甘いから、皆油断している。
みんなが視線を送るのは黒板じゃなくて、私・・・でもなくて、私の隣に座る

・・・(つき)()()()くん。
クラス中でも、学年中でも、学校中でも、女の子たちが目をハートにして、熱い恋心にぬれた視線を送っている。

入学当初から、高身長で何より顔がイケメンだって騒がれていた月音くんは、が悪口が始まった瞬間にたちまち人気になった。
でも、月音くんは誰とも喋ろうとはしなかった。

女の子とはもちろん、男の子とだって喋ろうとはせず、いつも1人でいた。
でも、それが逆に人気で、「イケメンな一匹狼」って密かに呼ばれて人気を集めている。

とにかく、月音くんの色々なところが、ぜんぶキラキラしているようにみんなには見えているのだと思う。

確かに月音くんはイケメンだし、勉強もスポーツもかんぺきで天は二物を与えずなんて嘘なんじゃないかって思う。
でも、私は興味が無い。

叶わない恋を追いかけたところで、時間のムダなんじゃないかって思って。
でも、そんなことを言ったら学校中の女の子に睨まれるのはもう見えている。

学校という場所は、言わば小さなセカイ。
狭い空間だからこそ、噂はすぐに通り、情報はすぐに流出し、友達はすぐに別世界へ引き込まれ、言動によれば一人ぼっちになるという、単純なセカイ。

だからこそ怖い。
なりきっていたって、いつバレてもおかしくないほど、このセカイは監視の目であふれている。