私ときみのひみつ

自らの表情は笑ってるとはいえ、そんなに笑えるほど今は楽しくない。
もちろん、綾香たちは小学生の頃からの付き合いだから大好きな親友だし、話していて楽しいときのほうが多い。

でも、恋愛絡みになった途端、私は「普通の女子中学生」から、「なりきる女子中学生」になる。
今は上手く笑えてるけど、いつか我慢ができなくなって笑えなくなったらどうしようって不安になる時がある。

「それでさ、どう思う!?」

その顔に笑みを浮かべながら、綾香が私の机に手を付きながら聞く。
どう答えようか悩んでいたら、タイミング良くチャイムがなった。

「チャイム、鳴っちゃったから席着こう。」

私は綾香たちに声をかけ、席に座るよう促して、ふっと息を吐きながら席に着いた。
朝から喋ってくる話は、一体どこから仕入れてきているのかわからないけれど、その情報が間違ったことがないことがないから、すごいなあって思う。

このクラスに、恋バナをしていない女の子なんて存在しないと思うって言っても過言じゃないくらい、みんなは恋愛に溺れている。
だから、私もそんな女の子のふりをする。
そうしないと、仲間はずれにされそうで、怖いから。

本当は、恋愛になんて興味はないし、男の子を好きになるっていう感覚もわからない。
口を開けば恋バナばかり。そんな女の子に驚いたこともあったけれど、それがふつうってことなのかもしれない。