柔らかな春の陽射しが、教会の白い尖塔を照らしていた。
 祭壇の奥まで伸びる真紅のバージンロード。その先に、黒のタキシードを纏った悠真が立っている。
 厳しい顔立ちは変わらないのに、私を見つめるその瞳は、今まででいちばん優しい。

 父と腕を組み、一歩ずつ進む。
 足元の花びらが小さく舞い上がり、胸の奥が熱くなる。
 ――あの雨の日から、こんな未来が待っているなんて、想像もできなかった。

 祭壇の前で、父の手から私の手へと悠真の手が移される。
 その瞬間、彼の指先が強く私を握り返した。
 「……もう二度と、離さない」
 小さな声は、私だけに届く誓いだった。

 神父の問いかけに、悠真は迷いなく「誓います」と答える。
 私も涙を堪えながら「誓います」と返した。
 指輪が指に滑り込む感触と同時に、胸の奥に温かな光が満ちていく。

 式が終わり、拍手と花びらに包まれる中、悠真が私の耳元で囁く。
 「幼い頃にした約束、今日から一生かけて果たす」
 その言葉は、どんな宝石よりも眩しく輝いていた。

 こうして、冷たいと思い込んでいた彼の瞳は、永遠を誓う温もりで満たされている。
 私たちの物語は、ここからまた、新しい一歩を踏み出すのだ。