夜が明け、嵐は去っていた。台風一過の空はどこまでも澄み切っていて、残された雲が朝日を柔らかく反射していた。
春馬たちは体育館の扉を開け、外に出た。雨で濡れた地面が朝日に照らされて光っている。
「……嘘みたいだな」勇希が呟いた。
しおりは泥で汚れた制服を見下ろし、笑い出した。
「昨日までのあの暴風が、夢だったみたい」
愛理が旧校舎に目を向け、息を呑んだ。
「見て、壁画……!」
崩れた屋根の隙間から朝の光が差し込み、壁画に描かれた涙色インクが虹のように輝いていた。
恭子は思わず手を合わせ、涙を拭った。
「まるで、この絵のために空が晴れたみたい」
オンライン配信を続けていたタブレットの画面には、コメントが次々と流れている。
《すごい光景だ》《これは奇跡だ》《泣いてるのは私だけじゃない》
春馬はカメラを構え、シャッターを切った。
「これが、俺たちのゴールだ」
彼は深く息を吸い、仲間たちに向き直った。
「ありがとう。みんながいてくれたから、ここまで来られた」
勇希は拳を突き上げた。
「決断が遅い春馬でも、やるときはやるんだな!」
しおりは小さく笑い、肩をすくめる。
「嫌われ役の私も、今日は報われた気がするよ」
愛理が静かに言った。
「春馬、この絵……泣いてるけど笑ってるね。まるであんたみたい」
「そうかな?」春馬は照れ笑いし、仲間たちを順番に見渡した。
仲間たちは壁画の前に立ち尽くしていた。夜通しの疲れはあるはずなのに、不思議と誰も倒れ込もうとはしなかった。
愛理がカメラを胸に抱きしめて言った。
「この景色、ずっと覚えておく」
春馬はその言葉を聞いて目を閉じた。あの時、何度も諦めそうになった自分が嘘のようだった。
しおりは足元の泥を拭き取りながら微笑む。
「嫌われてもいいって思ってたけど、みんなと笑えたらそれで十分だね」
「君の言葉がなかったら、この展示はできなかったよ」春馬が正直に言った。
しおりは目を丸くし、そして照れ隠しのように背を向けた。
勇希は手を腰に当てて言った。
「なあ春馬。これからも決断は遅いままか?」
「……どうだろう。でも昨日よりは、少し早くなれた気がする」
その言葉に勇希は大きく笑った。
「なら十分だ。俺たちはその一歩を一緒に見た」
恭子はタブレットを胸に抱え、涙を浮かべたまま言った。
「視聴者が千人を超えたわ……この光景を、みんなが見届けてる」
画面には《ありがとう》《一生忘れない》というコメントがあふれていた。
春馬は壁画に手を触れた。冷たくて、しかし確かな質感。
「この壁だけは、きっと残ってほしい」
愛理が頷いた。
「残るよ。だって、こんなに輝いてるもの」
誰かが小さく拍手をした。それは次第に大きくなり、仲間全員が自然と手を合わせていた。
朝の光が壁画を照らし続け、涙色インクは虹のような輝きを放っていた。
春馬たちは体育館の扉を開け、外に出た。雨で濡れた地面が朝日に照らされて光っている。
「……嘘みたいだな」勇希が呟いた。
しおりは泥で汚れた制服を見下ろし、笑い出した。
「昨日までのあの暴風が、夢だったみたい」
愛理が旧校舎に目を向け、息を呑んだ。
「見て、壁画……!」
崩れた屋根の隙間から朝の光が差し込み、壁画に描かれた涙色インクが虹のように輝いていた。
恭子は思わず手を合わせ、涙を拭った。
「まるで、この絵のために空が晴れたみたい」
オンライン配信を続けていたタブレットの画面には、コメントが次々と流れている。
《すごい光景だ》《これは奇跡だ》《泣いてるのは私だけじゃない》
春馬はカメラを構え、シャッターを切った。
「これが、俺たちのゴールだ」
彼は深く息を吸い、仲間たちに向き直った。
「ありがとう。みんながいてくれたから、ここまで来られた」
勇希は拳を突き上げた。
「決断が遅い春馬でも、やるときはやるんだな!」
しおりは小さく笑い、肩をすくめる。
「嫌われ役の私も、今日は報われた気がするよ」
愛理が静かに言った。
「春馬、この絵……泣いてるけど笑ってるね。まるであんたみたい」
「そうかな?」春馬は照れ笑いし、仲間たちを順番に見渡した。
仲間たちは壁画の前に立ち尽くしていた。夜通しの疲れはあるはずなのに、不思議と誰も倒れ込もうとはしなかった。
愛理がカメラを胸に抱きしめて言った。
「この景色、ずっと覚えておく」
春馬はその言葉を聞いて目を閉じた。あの時、何度も諦めそうになった自分が嘘のようだった。
しおりは足元の泥を拭き取りながら微笑む。
「嫌われてもいいって思ってたけど、みんなと笑えたらそれで十分だね」
「君の言葉がなかったら、この展示はできなかったよ」春馬が正直に言った。
しおりは目を丸くし、そして照れ隠しのように背を向けた。
勇希は手を腰に当てて言った。
「なあ春馬。これからも決断は遅いままか?」
「……どうだろう。でも昨日よりは、少し早くなれた気がする」
その言葉に勇希は大きく笑った。
「なら十分だ。俺たちはその一歩を一緒に見た」
恭子はタブレットを胸に抱え、涙を浮かべたまま言った。
「視聴者が千人を超えたわ……この光景を、みんなが見届けてる」
画面には《ありがとう》《一生忘れない》というコメントがあふれていた。
春馬は壁画に手を触れた。冷たくて、しかし確かな質感。
「この壁だけは、きっと残ってほしい」
愛理が頷いた。
「残るよ。だって、こんなに輝いてるもの」
誰かが小さく拍手をした。それは次第に大きくなり、仲間全員が自然と手を合わせていた。
朝の光が壁画を照らし続け、涙色インクは虹のような輝きを放っていた。



