暁の導標と羅針盤の少女

 暴走が完全に止まるまでの三分間、全員の心臓は爆発しそうなほど高鳴っていた。その恐怖は、今もまだ全身に残っている。
  柚は膝に手をつき、深呼吸を繰り返した。
  「……ほんとに終わったんだよね」
  湊斗は周囲を確認しながらうなずいた。
  「制御盤も安定しているし、外の潮流も正常に戻った。もう大丈夫だ」
  千愛は柚の手を取って立ち上がらせた。
  「柚、よく頑張った。あの時、一人で抱え込まずに言ってくれてよかった」
  柚は微笑みながら頷く。
  「みんながいたからできたんだ」
  航太は呪文の巻物を抱えたまま、まだ肩で息をしていた。
  「こんなに必死に読んだの、初めてかも……でも、みんなの声が聞こえてきて、間違わなかった」
  カロリーナが笑って彼の背中を軽く叩いた。
  「よくやったわよ、航太!」
  ドリューは携帯端末に記録したデータを保存しながら、真剣な顔で言った。
  「このデータは町の研究所に提供しよう。これだけの記録は、未来のために絶対役立つ」
  可奈子も笑みを浮かべて同意した。
  「これからの世代に残すの、大事だよね」


 安堵の空気が広がる中、柚はもう一度ペンダントを見つめた。暴走の間中ずっと光っていたそれは、今は静かに沈黙している。
  「ありがとう、おばあちゃん……」小さな声でつぶやくと、ペンダントがかすかに光を返したように見えた。
  湊斗が全員を見回し、真剣な表情を崩さないまま口を開いた。
  「ここで終わりじゃない。この遺跡が完全に眠りにつくまで、最後まで気を抜かずにいこう」
  千愛が頷き、航太も呪文の巻物を大事そうに抱え直した。
  カロリーナは両腕を大きく伸ばし、気分を切り替えるように笑った。
  「でも、とりあえず今は生きてることを喜んでもいいんじゃない?」
  ドリューも笑って頷く。
  「確かに。全員無事で帰れることほど大事なことはない」
  可奈子は少し涙目になりながら、柚の腕をそっと握った。
  「本当に、よかった……」
  柚は彼女の手を握り返し、笑みを浮かべた。
  「うん。絶対に町を守るって、みんなで誓ったからね」
  その言葉に全員がうなずき、もう一度制御盤を確認して出口へ向かった。三分間の恐怖は過ぎ去り、今は未来への道が目の前に開けていた。