暁の導標と羅針盤の少女

 球体の沈黙に伴い、遺跡内部の光がゆっくりと収まっていった。しかし、その中心部にはもう一つの装置――半透明の小さな球体が浮かんでいた。それは泡のように揺らぎながら淡い光を放っている。
  「これが“調律の泡”……?」柚が呟くと、ペンダントが再び光り始めた。
  千愛が装置に近づき、そっと触れてみる。すると、彼女の体に温かい感覚が流れ込み、胸の奥がじんと熱くなった。
  「なんだろう……責任を持たなきゃ、って気持ちがすごく強くなる」
  湊斗も手を添え、目を閉じた。
  「僕もだ……みんなのことを守りたいって気持ちが膨らむ」
  順番に全員が装置に触れると、不思議なことに全員の心が一つにつながった感覚が生まれた。考えが声にならなくても伝わる。柚は胸が熱くなり、涙がにじんだ。
  ――これが、遺跡が求めていた心の調律なんだ。
  装置が静かに音を立て、泡のような膜を放出し始めた。その膜は遺跡全体に広がり、やがて消えていく。航太がデータを確認し、笑みを浮かべた。
  「潮流が安定していく……もう暴走することはない!」
  柚はみんなを見回し、強く頷いた。
  「やったね、これで町も海も守られた!」


 調律の泡が完全に広がりきると、遺跡の壁面に刻まれていた文様が淡く光り、その後静かに消えていった。まるで使命を終えたと言わんばかりに、遺跡は深い眠りについたようだった。
  柚は胸に手を当て、仲間を振り返った。
  「これで本当に終わったんだね」
  千愛が小さく笑って答えた。
  「そうだね……でも、私たちの成長はここからだと思う」
  湊斗も頷き、メンバーを一人ずつ見つめた。
  「この経験を忘れないようにしよう。町を守ることも、自分の進む道も」
  可奈子は照れたように笑った。
  「なんだか、頼まれたら断れない性格でよかったかもね」
  ドリューがにっこり笑い、カロリーナは力強く親指を立てた。
  柚は最後にペンダントを掲げた。
  「おばあちゃん、みんなで守れたよ」
  ペンダントは静かに光り、やがてその光は消えた。
  全員がゆっくりと浮上し、海面へと戻る。水面を割った瞬間、青空と太陽の光がまぶしく彼らを迎えた。柚は息を大きく吸い込み、笑顔になった。
  ――もう恐れることはない。この海も、この町も、未来へ続いている。