暁の導標と羅針盤の少女

 祭りの熱気が冷めやらぬ夜、柚と湊斗は灯台の頂上にいた。海を見下ろすその場所は静かで、下の町の明かりが遠くに瞬いている。
  「今日は町のみんなが笑ってたね」柚が小さく笑うと、湊斗も頷いた。
  「うん。あの日、ペンダントが光ったときは正直怖かった。でも……結果的には、この町を一つにした」
  柚はペンダントを取り出して月光にかざした。もう光はなく、ただ静かにそこにあるだけだった。
  「おばあちゃん、この町を守れたよ」
  湊斗はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
  「俺、将来はこの町に関わる仕事がしたい。海に関することなら何でもいい。ここで得た経験を生かしたいんだ」
  柚は驚いて顔を上げる。
  「それって……転校してきたばかりなのに?」
  「だからこそだよ。ここに来て、自分の居場所を見つけた。柚たちに会えたから」
  柚は胸が温かくなった。
  「私も将来、この町を守る仕事をしたいな。おばあちゃんがしてたみたいに」
  二人はしばらく無言で海を眺めた。波の音だけが静かに響いている。
  やがて湊斗が言った。
  「未来のことを話すと、不思議と怖くないな」
  「うん。だって、仲間がいるもん」


 月が雲間から顔を出し、灯台の影を長く伸ばした。柚は風に揺れる髪を押さえながら、湊斗を見た。
  「これから先、どんなことがあっても、私たちなら乗り越えられる気がする」
  湊斗は笑い、力強く頷いた。
  「俺もそう思う。だって、柚がいるから」
  その言葉に柚の胸が熱くなった。言葉にするのは少し照れくさいけれど、同じ気持ちだった。
  「ありがとう……私も、湊斗がいてくれてよかった」
  海面には月の光が道のように伸び、まるで未来へと導いているかのようだった。
  柚はペンダントをそっとポケットにしまい、深呼吸をした。
  「よし、明日からも頑張ろう」
  湊斗も同じように深呼吸をし、笑みを浮かべた。
  「うん、未来のために」
  二人はしばらく無言で海を眺め続けた。灯台の光が静かに回転し、その光が町と海をやさしく照らしていた。
  ――これからの道は、きっと希望に満ちている。