夜明け前の波止場は静まり返っていた。かすかに潮の匂いが漂い、遠くで漁船のエンジン音だけが響く。凪桜は腕輪に触れ、深呼吸をした。
  昨日、腕輪に宿る少女・汐里の記憶を見たことで、胸の奥に強い決意が芽生えていた。
  「守るって、こういうことなんだね……」
  そこへ大河たちが現れた。亮佑は資料バッグを肩にかけ、梨奈はプレゼン用の資料を抱え、稜はギターケースを背負っている。玲菜は真っ直ぐな眼差しで凪桜を見つめた。
  「集まってくれてありがとう」凪桜が言うと、稜が笑いながら肩を叩いた。
  「当たり前だろ。ここで諦めたら意味ないし」
  大河が全員を見回し、ゆっくりと頷く。「これからが本番だ。町内会も協力してくれることになったし、全力で止めよう」
  五人は円陣を組んだ。凪桜は腕輪に触れ、強く願う。
  「掘削を必ず止める。町を守る」
  その声に全員が重なるように叫んだ。「おう!」
  海から吹く風が彼らを包み、凪桜の腕輪が淡く光った。
  汐里の声が、確かに聞こえた気がする。——ありがとう。
  この瞬間、海守り隊は一つの強い意志で結ばれた。