数日後の放課後、健心と真由は校舎裏に立っていた。
  春の夕暮れ、桜の花びらが風に舞う。その穏やかな景色の中で、健心はふと違和感を覚えた。
 「……空が揺れてないか?」
  見上げると、夕焼けの一部が波紋のように揺らいでいる。
  真由もそれに気づき、不安げに呟いた。
 「これ……まだ時間の歪みが残ってる?」
  懐中時計がポケットの中で震え、淡い光を放った。
 「完全には終わってなかったのね」
  背後から早苗の声がした。彼女は走ってきて息を整えた。
 「街のあちこちで、小さな歪みが見つかってるの。残滓――あの戦いの影響ね」
  そこへ菜々と和希も到着した。
 「調査してたら分かったの。誰かがこの残滓を意図的に広げている」菜々は険しい顔をして言った。
 「誰か……って、まさか捨てられた将吾?」
  健心の問いに菜々は首を横に振った。
 「違うわ。彼はもう消えた。これは別の存在――“歪みに棲むもの”」
 「歪みに棲む……?」真由は首をかしげた。
  その時、空の揺らぎから黒い影が現れた。
  人の形をしているが顔はなく、ただ空洞のような穴が開いている。
 「……何だ、あれは」健心が一歩下がる。
  影は無言のまま手を伸ばし、周囲の空間をさらに歪ませた。
  将吾が突然現れ、影の前に立った。
 「これが……残滓の主か」
  彼は腕を組み、険しい目で影を睨む。
 「お前らは関わらない方がいい」
 「どういうことだよ?」健心が詰め寄ると、将吾は静かに答えた。
 「この存在は俺たちが過去を変えたことで生まれた。言わば俺たちの罪の化身だ」
  その言葉を聞き、真由は懐中時計を強く握った。
 「じゃあ、放っておけないよね」
 「やめろ!」将吾が制止する。
 「これに触れれば、今度こそ二度と戻れない」
  だが健心は一歩前へ出た。
 「それでも……逃げたくない。真由と誓ったんだ。未来を失わないって」
  影がゆっくりとこちらに向かって歩き出す。
  周囲の空気が歪み、時間の流れが再び狂い始めた。
  真由が小さく震える。
 「健心……」
 「大丈夫、今度は守る」
  健心は懐中時計をかざし、強い光を放つ。影が一瞬だけ動きを止めた。
  その瞬間、空間全体が砕けるような音を立てた。
 「来るぞ!」将吾の叫びと同時に、影が無数に分裂し襲いかかってきた――。


 数日後の放課後、健心と真由は校舎裏に立っていた。
  春の夕暮れ、桜の花びらが風に舞う。その穏やかな景色の中で、健心はふと違和感を覚えた。
 「……空が揺れてないか?」
  見上げると、夕焼けの一部が波紋のように揺らいでいる。
  真由もそれに気づき、不安げに呟いた。
 「これ……まだ時間の歪みが残ってる?」
  懐中時計がポケットの中で震え、淡い光を放った。
 「完全には終わってなかったのね」
  背後から早苗の声がした。彼女は走ってきて息を整えた。
 「街のあちこちで、小さな歪みが見つかってるの。残滓――あの戦いの影響ね」
  そこへ菜々と和希も到着した。
 「調査してたら分かったの。誰かがこの残滓を意図的に広げている」菜々は険しい顔をして言った。
 「誰か……って、まさか捨てられた将吾?」
  健心の問いに菜々は首を横に振った。
 「違うわ。彼はもう消えた。これは別の存在――“歪みに棲むもの”」
 「歪みに棲む……?」真由は首をかしげた。
  その時、空の揺らぎから黒い影が現れた。
  人の形をしているが顔はなく、ただ空洞のような穴が開いている。
 「……何だ、あれは」健心が一歩下がる。
  影は無言のまま手を伸ばし、周囲の空間をさらに歪ませた。
  将吾が突然現れ、影の前に立った。
 「これが……残滓の主か」
  彼は腕を組み、険しい目で影を睨む。
 「お前らは関わらない方がいい」
 「どういうことだよ?」健心が詰め寄ると、将吾は静かに答えた。
 「この存在は俺たちが過去を変えたことで生まれた。言わば俺たちの罪の化身だ」
  その言葉を聞き、真由は懐中時計を強く握った。
 「じゃあ、放っておけないよね」
 「やめろ!」将吾が制止する。
 「これに触れれば、今度こそ二度と戻れない」
  だが健心は一歩前へ出た。
 「それでも……逃げたくない。真由と誓ったんだ。未来を失わないって」
  影がゆっくりとこちらに向かって歩き出す。
  周囲の空気が歪み、時間の流れが再び狂い始めた。
  真由が小さく震える。
 「健心……」
 「大丈夫、今度は守る」
  健心は懐中時計をかざし、強い光を放つ。影が一瞬だけ動きを止めた。
  その瞬間、空間全体が砕けるような音を立てた。
 「来るぞ!」将吾の叫びと同時に、影が無数に分裂し襲いかかってきた――。