光が収まったとき、健心たちは玉座の前に立っていた。
  クロノスの瞳は優しく輝き、その声はこれまでよりも柔らかかった。
 「汝らの選択を認めよう。過去をねじ曲げたことは消えぬが、未来を紡ぐ意思がある限り、存在するに値する」
  健心は真由の手を強く握った。
 「ありがとう……でも、これで本当に終わりなのか?」
 「終わりではない。始まりだ」クロノスの声が響く。
 「時間は常に変化し続ける。選択があれば、また新たな岐路が生まれる。その時、再び問おう――汝らは何を選ぶか」
  クロノスの姿が光に溶けるように消え、空間全体が揺らいだ。
  気づけば健心たちは再び廃神社に立っていた。
  和希が肩の力を抜き、笑った。
 「生き残った……ってことでいいのか?」
 「うん、たぶんね」早苗が苦笑する。
  菜々は懐中時計を見つめながら呟いた。
 「でも、これからも試されるんだね」
  真由は健心に寄り添い、小さく微笑んだ。
 「私、やっと分かった気がする。記憶をなくしても、選ぶことはできるって」
  健心は彼女を見つめ、優しく答えた。
 「そうだ。未来はこれから作ればいい」
  その言葉に真由は頷き、懐中時計をそっと握った。
  時計は静かに光り、二人を包み込むように輝いていた。
  将吾が空を見上げ、ぽつりと呟く。
 「新しい時間が動き出す……か」
  夕暮れの光が差し込み、街を暖かく染めていた。
  すべてが終わり、そして始まる――彼らの新しい時間が。