告白を終えた二人は、しばらく見つめ合って微笑んだ。
  真由の目にはもう迷いはなく、健心はその手をしっかりと握り返した。
  翌日、放課後の屋上でメンバー全員が集まっていた。
  和希が腕を組んで言う。
 「街は平和になったけど、まだ不安要素は残ってる」
 「残滓のこと?」早苗が尋ねる。
 「ああ。小さい歪みがまだ点在しているらしい」
  菜々は懐中時計を見ながら頷いた。
 「安定化はしているけど、完全に消すには時間が必要。でも、その間に何かが入り込む可能性はある」
  健心は真由の手を握ったまま、まっすぐ答えた。
 「なら、俺たちで守ろう。この街も、この時間も」
  その言葉に将吾が少し笑った。
 「お前らしいな。……ただし、守るってことは戦う覚悟を持つってことだ」
 「わかってる。でも、もう逃げない」
  真由はうなずき、皆を見渡した。
 「私も一緒に戦う。記憶が戻らなくても、今の気持ちは本物だから」
  菜々が微笑む。
 「あなたはもう“鍵”だからね。私たちと一緒に進めばいい」
  その時、空に小さな亀裂が走った。
  波紋のように広がる歪みの中から、低い音が響く。
 「また……?」早苗が身構えた。
  将吾は一歩前に出て、表情を引き締めた。
 「違う。これは残滓じゃない。新しい何かだ」
  影のようなものが亀裂から現れかけたが、すぐに閉じた。
  和希が額の汗をぬぐう。
 「……まだ終わってなかったんだな」
  健心は真由を守るように立ち、静かに言った。
 「どんなものが来ても、俺たちで未来を作る」
  真由が笑い、健心の腕を軽く叩く。
 「じゃあ、これからも“はじめまして”を何度でもしようね」
 「おう。何度でも」
  二人の笑顔は夕焼けの光に包まれ、懐中時計が温かい光を放った。