冷たいはずの王子様は少女にある勝負を仕掛け、甘い溺愛を注ぐ。

しかし、蒼河様は少しも動かない。

「どいて下さい」

「主人に『どいて下さい』は失礼だ」

「では、この状況で何を言うのが正解だと言うのですか?」

「『私にキスして下さい』とか?」

「そんな冗談を私が言うように見えますか?」

そろそろパーティーの時間が迫っている。

これ以上、蒼河様に構っている時間は本当になくなってきていた。

「なぁ、広葉。俺はメイドのことは信頼するようにしている。何より、使用人に頼られたら守るのが主人の仕事だとも思っている」

「何が言いたいのですか?」






「頼れ。広葉が俺に悪意を持って自分を偽っているのでないなら、俺はどれだけでもお前を助けてやる」






冷酷にも見えるこの男は、自分は誰にも頼らないのに、誰かを守ることは上に立つものの使命だと思っている。