冷たいはずの王子様は少女にある勝負を仕掛け、甘い溺愛を注ぐ。

「ご挨拶が遅れまして大変申し訳ありません。浅川 広葉と申します」

マナーレッスンを受けている時に講師が言っていた。

『マナーは武器だ』、と。

私もまさにその通りだと思う。

私が美しい一礼をするだけで……まるでどこかのご令嬢のような一礼をするだけで、周りは勝手に誤解する。

私がどこかのご令嬢だと勘違いしてくれる。

そして私の有無を言わせない圧にご令嬢たちは「そういえば今日のお召し物は素敵ですわね」と話を変えた。

私が話が変わってホッとしたのも束の間、蒼河様の顔色にはまだ怒りが残っていた。

「蒼河様、少しこちらへ」

別の参加者が会場に入り、私たちから注目が逸れたタイミングで、私は蒼河様をこそっとバルコニーへ連れ出す。

バルコニーに他に誰も人がいないことを確認して、私は蒼河様に詰め寄る。