冷たいはずの王子様は少女にある勝負を仕掛け、甘い溺愛を注ぐ。

「彼女はうちのメイドなんだ」

簡単にそう返した蒼河様に悲鳴に近い声が上がる。


「メイドですか……?」


その聞き返しが良い意味でないことは、誰が聞いても明らかだった。

蒼河様はまだニコニコと人当たりの良い表情を浮かべているが、内心何を考えているか分からない。

何より蒼河様は「冷たい王子様」と呼ばれている。

誰にでも優しいようで、それでいて誰とでも一線を引いている雰囲気を感じられる蒼河様。

彼は見知らぬ人間が自分に踏み込むことを過度に嫌う。

それを皆、知っているはずなのに一人の女性が前のめりにある言葉を発した。




「蒼河様、失礼ですがこのメイドはどこかのご令嬢で?」




その瞬間、蒼河様の表情に怒りが(にじ)んだことに気づいた。

きっとまだ私以外は気づいていない。

まだ間に合うと踏んだ私は一歩前に進む。