「お(たわむ)れはおやめ下さい」

いつも通りの口調でそう言い返したのに、恥ずかしくてつい顔を背けてしまう。

そんなことは今までしたことがなかったのに。

それでも主人から目を逸らす自分は嫌だったので、すぐに意を決して顔を蒼河様に向ける。

蒼河様はまるで私がこちらを向くのを待っていたとでもいうように、じっと私の顔を見つめたままだった。






「広葉、今日はお前をエスコートさせて欲しい」





「私はパーティーに詳しくないので、蒼河様にエスコートして頂かないと困ります」






いつも通りの可愛げゼロの言い草。

しかし、蒼河様は私の腰をさらにグッと引き寄せた。

「今日は俺から離れるなよ」

パーティーの時間はもうすぐ始まろうとしていた。