冷たいはずの王子様は少女にある勝負を仕掛け、甘い溺愛を注ぐ。

「すみません、今は丁度着替え途中で。明日、用事を(うかが)ってもよろしいですか?」

私は知っている。

幼い頃から礼儀を教え込まれている蒼河様がこう言えば絶対に引くことを。

後でまた来る、とも言わないことを私は知っている。

「いや、こちらこそ突然声をかけてすまない。明日で大丈夫だ」

それだけ言って、蒼河様の足音は私の自室から遠ざかっていく。





「私って嘘ばっかりだね」






一人ぼっちの部屋で、ぬいぐるみにそう話しかけた自分の声が静かな部屋に響き渡る。

それでも、夜に蒼河様に会うつもりは一切なかったのに。

その日の深夜12時、私は蒼河様と顔を合わせることになる。